これまで学んだように、感情は人間にとって必要なものです。
しかし、感情に振り回されると悪循環に陥ってしまいます。
そこで、「感情といい距離を保って、感情と上手に付き合う」ことが必要になります。

試すことができそうな応急処置はありましたか?
ネガティブ感情を悪化させるような役に立たない「行動」をとっていたとしたら、別の「行動」をとってみて、「結果」が変わるか確認してみましょう!
ネガティブな感情を経験している時、「むちゃ食いをする」、産後であれば「テレビをただぼーっと眺めている」など、特定の行動をとっていることが多いものです。

もし、その行動を取り続けることでネガティブな感情が悪化するのであれば、その「行動」を見直す必要があります。
「行動」を変えることで、「感情」も変化していきます。
「感情」を無理やり変えることは難しいので、「行動」を変えることが大切です!
ここまで、ネガティブな感情が高まったときに、「行動」を変えることで悪循環に陥らないことを学んできました。
悪循環を断ち切ると同時に、良い循環を作っていくこともとても大切です。

つまり、嬉しい、楽しい、やりがい、達成感、癒し、安心といったポジティブな感情が経験できるような「行動」を生活に取り入れていくのです。
その行動は「あなたを大切にする」行動と言えそうですか?
それぞれの行動をしている時、嬉しい、楽しい、やりがい、達成感、癒し、安心といったポジティブな感情を味わっているか、悲しい、怒り、不安などネガティブな感情を味わっているか確認してみましょう。
生活をするために、家事など「やらなくてはいけない」こともあるでしょう。しかし、「やらなくてはいけない」ことばかりをやっていては、良い循環を作ることはできません。
やるべきことをやりながらも、心の余裕が持てている状態を「バランスが取れている」とするならば、今の生活はどうでしょうか?
これまで「あなたを大切にする」行動と「やらなくてはいけない」行動とのバランスは取れていますか?
もしバランスがうまく取れていないようなら、現実的にできそうな「あなたを大切にする」行動を生活に取り入れてみましょう。
どの時間帯に、どれくらい楽しい行動ができそうか計画してみましょう!

パートナーの「自分を大切にする」行動も大事にして、パートナーの生活のバランスも保つようにしましょう。
産後は、やるべきことがもっと多くなります。
その状況に合わせて、活動の内容、時間、行う場所を変えながら、さまざまな形で楽しい活動を取り入れるようにしましょう。産後に何ができそうでしょうか?
「感情」を変化させるもう1つの方法として、あなたの「考え」に注目することができます。

例えば、「赤ちゃんが泣きやまない」とき、あなたはどのような考えが頭に浮かびますか?
「泣きやまないのは私がうまく育てていないからだ」
「今日はご機嫌斜めの日。赤ちゃんは泣くのが仕事」
同じ出来事でも色々な考え方ができるのです。
ネガティブな感情を強める考え方がいくつかあると言われています。
他にもさまざまな思考パターンがありますが、いずれも「極端である」ことがポイントです。普段は自分の思考パターンに気付かないことが多いです。
普段の考えを書き出して、極端な思考パターンになっていないか見直してみましょう。
物事に対する考えは、「事実」ではなく、あくまで「推測」です。
ですから、1つの考え方にとらわれるのではなく、さまざまな考え方ができると、心が楽になることがあります。

なかなか自分だけで他の考え方が出ない時には、周りにいる「素敵なお母さん」を見つけて、「あなたならどう考える?」と聞いてみてもいいかもしれません。
柔軟に物事を捉えることで、「感情」が落ち着いたり、役に立つ「行動」を取りやすくなります!

あなたが妊娠中と出産後に困った時、
ストレス源の多くは、人との付き合いの中で生じます。
特にあなたと親密な関係にある人(重要な人)との関係でストレスを感じることが多いのです。重要な人との関係性においては、互いを傷つけ合うこともあれば、互いの支えにもなるのです。

人は重要な人との関係で傷つき、重要な人との関係で癒されます。

「お母さん」としてのあなた
「妻」としてのあなた
「子」としてのあなた
「労働者」としてのあなた
「ママ友」としてのあなた
あげればきりがないくらい、人は多くの役割を持っています。
パートナーであるお父さん、あなたにとって重要な人(例えば、あなたの親、友人)も、もちろんあなたと同じように「役割」が変化しています。
役割が変化するとき、多くの人はストレスを感じ、重要な人との間に亀裂が入ることもあります。同じ出来事でも、重要な人の支えがあるかどうかで、その出来事の影響力は変わります。
重要な人との関係性で、よく問題になることが、次の3つです。

あなたが考える「良き」母親とは?
あなたが考える「良き」パートナーとは?
あなたの期待通りにパートナーを変えることはまずできないでしょう。なぜなら、あなたとパートナーが育ってきた環境、性格は全く別物だからです!
他にも、文化的な違いもあるでしょう。
家庭のことは女性がやるべきという考えが強い地域もあります。
パートナーの反応があなたの期待と違うこともあるでしょう。そんなときは、あまり期待しないことで、少し気持ちが楽になるかもしれません。
「別の人」である重要な人と上手に付き合っていくためにはどうすればいいのでしょうか?まずは次のやり取りを聞いてみましょう!
体調が悪くソファに横になっていたあなたに、、、
この服、洗っといて |
|||
|---|---|---|---|
| この状態見てわからないの?そんなこと今頼まないでよ! | え、、あ、うん。 やっておくね。 |
はぁ(ため息)、 やっておく。 |
今日は体調が悪くて、悪いんだけど明日でもいいかな? |
この服、洗っといて |
|||
|---|---|---|---|
| この状態見てわからないの?そんなこと今頼まないでよ! | |||
| え、、あ、うん。 やっておくね。 |
|||
| はぁ(ため息)、 やっておく。 |
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| 今日は体調が悪くて、悪いんだけど明日でもいいかな? | |||
人との付き合い方には大きく分けて4つあります。
あなたはどの付き合い方をよくしていますか?
| 攻撃的 | 受身的 | 間接的 | 主張的(アサーティブ) | |
|---|---|---|---|---|
| 私 | ○ | × | × | ○ |
| 相手 | × | ○ | × | ○ |
| 少し体調が優れない日に、帰宅した夫から「この服、洗っておいて」と言われた。 | 「この状態見てわからないの?!体調悪いのにそんなこと頼まないで!」 | 「あ・・・うん、わかった。やっておくね。」 | 「はぁ(ため息)、やっておく」と不機嫌そうな顔をしながら洗濯をする。 | 「今日は体調が悪くて、今日中にはできないかも。明日でも大丈夫かな?」 |
| 少し体調が優れない日に、帰宅した夫から「この服、洗っておいて」と言われた。 |
| 攻撃的 | |
|---|---|
| 私 ○ | 相手 × |
| 「この状態見てわからないの?!体調悪いのにそんなこと頼まないで!」 | |
| 受身的 | |
|---|---|
| 私 × | 相手 ○ |
| 「あ・・・うん、わかった。やっておくね。」 | |
| 間接的 | |
|---|---|
| 私 × | 相手 × |
| 「はぁ(ため息)、やっておく」と不機嫌そうな顔をしながら洗濯をする。 | |
| 主張的(アサーティブ) | |
|---|---|
| 私 ○ | 相手 ○ |
| 「今日は体調が悪くて、今日中にはできないかも。明日でも大丈夫かな?」 | |
重要な人とうまく付き合っていくために、「アサーティブスキル」 というスキルが役に立ちます。
アサーティブ(主張的)とは自分の主張だけを通すだけではなく、同時に相手も尊重するコミュニケーションの取り方です。

アサーティブスキルを身につけることができれば、重要な他者との関係を円滑にし、妊娠中、出産後の生活もしやすくなるでしょう!
次のやりとりを聞いて、どちらの方が上手な付き合い方か考えてみましょう。また、あなたなら他にどのような言い方ができそうでしょうか?
| 相手 | 状況 | 例1 | 例2 |
|---|---|---|---|
| 夫 | 夕食を準備していたら赤ちゃんが泣き始めた。でも旦那はゲームをして気づいていない。 | ||
| 実の母 | 母乳(ミルク)をさっき十分あげたばかりなのに、赤ちゃんが泣いているからと実母がまたミルクをあげようとしている。 | ||
| 同居する義理の母 | 体調不良で夕飯が作れず、義理の母に頼みたい。 | ||
| 子どもを預けられるママ友 | 美容室に行くために、友人に子どもを預けたい。 | ||
| 会社の上司 | 所属する部署に急ぎの仕事が入ってきて、部署全体で対応が必要な時だが、体調不良のため早退したい。 |
| 夫 | 夕食を準備していたら赤ちゃんが泣き始めた。でも旦那はゲームをして気づいていない。 |
例1
例2
|
| 実の母 | 母乳(ミルク)をさっき十分あげたばかりなのに、赤ちゃんが泣いているからと実母がまたミルクをあげようとしている。 |
例1
例2
|
| 同居する義理の母 | 体調不良で夕飯が作れず、義理の母に頼みたい。 |
例1
例2
|
| 子どもを預けられるママ友 | 美容室に行くために、友人に子どもを預けたい。 |
例1
例2
|
| 会社の上司 | 所属する部署に急ぎの仕事が入ってきて、部署全体で対応が必要な時だが、体調不良のため早退したい。 |
例1
例2
|
例2では、重要な人とうまく付き合うためのコツのいずれかを使っていました。これらのコツを覚えておくと良いでしょう!
| あなた(You)メッセージ | 私(I)メッセージ |
|---|---|
| すぐにそのドアを閉めて(命令) | (私は)そのドアをすぐに閉めてほしいな |
| これじゃ汚れを落とせてないじゃない!(批判) | (私は)これだと汚れが落ちてないと思うな |
| 人の言うことを全然聞いてないじゃない!(説教) | 私の言うことを聞いてもらえると助かるな |

重要な人と話し合って問題を解決する必要があるときもあるでしょう。
そんなときのコツを覚えておきましょう!

人とうまく付き合う方法を学ぶことも大切ですが、重要な人と日頃から親密な関係性を育んでいくことも大切です。
産後、生まれた赤ちゃんと新しい関係性をつくっていく一方で、パートナーとの親密さが薄れたと話すお母さんも多くいます。
特に、スキンシップを含めた性的な親密さです。
パートナーとの親密さを保つことは、赤ちゃんにとってはもちろん、あなたとあなたのパートナーにとっても、いい影響がたくさんあります。
そのためにも、妊娠期だけではなく、産後にもパートナーとの会話やスキンシップを通して、お互いの気持ちを伝え合ったり、問題を解決していくことが重要です。
パートナーとの間でストレスを感じているとき、思いやりのある行動がとれずに、親密さはなかなか育ちません。できればパートナーと共有して、次のような思いやりのあるちょっとした行動を生活の中で増やしていきましょう!
例えば・・・
あなたの中の感情が伝えてくれるメッセージを知ることと、感情に振り回されることは全く違います!
「行動」を変えたり、「考え」を変えたり、問題自体を解決したりすることで、「感情」と上手に付き合うことができます。

もしやるべきこと、やりたいことができていないことが続いたら、それは感情に振り回されているかも・・・
あなたの行動と考えを振り返って、感情と上手に付き合っていきましょう!

感情が高まっている時には、体に力が入っていることが多いです。
楽な姿勢になり、5秒かけて息を鼻から吸っていきます。少しずつ細く長く息を吐きます(呼吸法)。

ネガティブな感情に振り回されている時、頭の中ではネガティブな考えでいっぱいになることが多いものです。
ネガティブな考えや感情に注目しすぎている状態から、一時的に離れるための行動をします。
例えば、集中力のいるゲームをやる、集中できる映画や番組を見る、友達に電話して話すなどです。
ネガティブな考えや感情から注意をそらすことができる行動は、人によって様々です。
何か心配したり、不安に感じているときに浮かんできた不安や心配の内容をメモに書き出します。ある程度書き出したら、心配メモを机の引き出しの中などにしまいます。
心配メモを机にしまったら、心配事を考える時間は終わり、と区切りをつけましょう。
時間が経ってから、先ほど書いた心配メモを取り出して、心配事が今も継続して心配に思っているか確認します。
心配が続いていなければ、一時的な感情であると判断しましょう。
まだ心配が続いているようならば、現実的に問題解決をする、あるいは誰かに聞いてみたほうが良い事柄かもしれません。
心配することが多い方には、心配メモの他に、心配タイムをお勧めします。「夕飯の前の20分」というように「心配だけをする時間」をあえて決めます。時間は短くて済むようなら20分以内で構いません。就寝前は避けて、時間を設定しましょう。