感情と上手に付き合う
感情と仲良くなる方法

これまで学んだように、感情は人間にとって必要なものです。
しかし、感情に振り回されると悪循環に陥ってしまいます。
そこで、「感情といい距離を保って、感情と上手に付き合う」ことが必要になります。

そのために、
1)強い感情を経験する時に何が起きているかを知りましょう!
2)良い循環を作るためのスキルを身につけましょう!

感情と仲良くなる方法
ネガティブな感情を余計に膨らませないために、そして悪循環に陥らないために、感情が高まった時にいつもしている「行動」を変えましょう。
ここでは、高まった感情を一旦落ち着かせるための「行動」を、応急処置としていくつか紹介します。
効果は人によって個人差があるので、あなたに合う応急処置があるか、いろいろ試してみましょう!

まずは応急処置をする

リラクセーション

気ぞらし

心配メモ


試すことができそうな応急処置はありましたか?
ネガティブ感情を悪化させるような役に立たない「行動」をとっていたとしたら、別の「行動」をとってみて、「結果」が変わるか確認してみましょう!
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まずは応急処置をする

ネガティブな感情を経験している時、「むちゃ食いをする」、産後であれば「テレビをただぼーっと眺めている」など、特定の行動をとっていることが多いものです。

もし、その行動を取り続けることでネガティブな感情が悪化するのであれば、その「行動」を見直す必要があります。

「行動」を変えることで、「感情」も変化していきます。
「感情」を無理やり変えることは難しいので、「行動」を変えることが大切です!

行動を変える

ここまで、ネガティブな感情が高まったときに、「行動」を変えることで悪循環に陥らないことを学んできました。

悪循環を断ち切ると同時に、良い循環を作っていくこともとても大切です。


つまり、嬉しい、楽しい、やりがい、達成感、癒し、安心といったポジティブな感情が経験できるような「行動」を生活に取り入れていくのです。

行動を変える
あなたは何をしているとき、誰といるとき、どこにいるときにポジティブな感情を経験するでしょうか?

冊子へ その行動は「あなたを大切にする」行動と言えそうですか?

あなたの1日(または1週間)の行動をリストアップしてみましょう。

それぞれの行動をしている時、嬉しい、楽しい、やりがい、達成感、癒し、安心といったポジティブな感情を味わっているか、悲しい、怒り、不安などネガティブな感情を味わっているか確認してみましょう。
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行動を変える

生活をするために、家事など「やらなくてはいけない」こともあるでしょう。しかし、「やらなくてはいけない」ことばかりをやっていては、良い循環を作ることはできません。

やるべきことをやりながらも、心の余裕が持てている状態を「バランスが取れている」とするならば、今の生活はどうでしょうか?
これまで「あなたを大切にする」行動と「やらなくてはいけない」行動とのバランスは取れていますか?

もしバランスがうまく取れていないようなら、現実的にできそうな「あなたを大切にする」行動を生活に取り入れてみましょう。

冊子へ どの時間帯に、どれくらい楽しい行動ができそうか計画してみましょう!
行動を変える

「あなたを大切にする」行動をすることに罪悪感を抱く人もいるかもしれません。しかし、あなたが生活を楽しむことで、赤ちゃんにもパートナーにも良い影響を与えます。
また、これはあなただけではなく、パートナーも同じです。

パートナーの「自分を大切にする」行動も大事にして、パートナーの生活のバランスも保つようにしましょう。
産後は、やるべきことがもっと多くなります。
その状況に合わせて、活動の内容、時間、行う場所を変えながら、さまざまな形で楽しい活動を取り入れるようにしましょう。産後に何ができそうでしょうか?
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柔かい頭を作る

「感情」を変化させるもう1つの方法として、あなたの「考え」に注目することができます。


例えば、「赤ちゃんが泣きやまない」とき、あなたはどのような考えが頭に浮かびますか?

「泣きやまないのは私がうまく育てていないからだ」
「今日はご機嫌斜めの日。赤ちゃんは泣くのが仕事」

同じ出来事でも色々な考え方ができるのです。

柔かい頭を作る

ネガティブな感情を強める考え方がいくつかあると言われています。

全か無か思考

個人化

他にもさまざまな思考パターンがありますが、いずれも「極端である」ことがポイントです。普段は自分の思考パターンに気付かないことが多いです。
普段の考えを書き出して、極端な思考パターンになっていないか見直してみましょう。
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柔かい頭を作る

物事に対する考えは、「事実」ではなく、あくまで「推測」です。
ですから、1つの考え方にとらわれるのではなく、さまざまな考え方ができると、心が楽になることがあります。

「赤ちゃんが泣きやまない」という出来事に対して、どのような考え方ができるでしょうか?
もしその出来事に悩んでいる人がいたら、なんと声をかけてあげますか?
できるだけ多くの考え方を挙げてみましょう!

なかなか自分だけで他の考え方が出ない時には、周りにいる「素敵なお母さん」を見つけて、「あなたならどう考える?」と聞いてみてもいいかもしれません。
柔軟に物事を捉えることで、「感情」が落ち着いたり、役に立つ「行動」を取りやすくなります!

ストレス源そのものに対処する


ネガティブな感情を抱くときの「きっかけ」は、「ストレス源」とも言えます。場合によっては、ストレス源そのものに対処し、状況を変えることもできます。
ここでは、ストレス源そのものに対処するコツを学んでいきます。
ストレス源そのものに対処する

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応援してくれる人を見つける
ストレス源そのものに対処しようとする場合、あなただけで対処することは少ないかもしれません。あなたを応援してくれる人はいますか?

冊子へ あなたが妊娠中と出産後に困った時、
応援してくれる人たちは誰ですか?

パートナー、実の両親、パートナーの両親、きょうだいに相談することも良いでしょう。しかし、その人たちだけではなく、同じ妊婦さん、先輩お母さんたち、お友達も、あなたを応援してくれるでしょう。また、専門家(保健師、助産師、看護師、心理士、医師など)による相談窓口や子育てサロンなども活用できます。
あなたの近くで、応援してくれる人が見つかるかもしれません!

人とうまく付き合う

ストレス源の多くは、人との付き合いの中で生じます。
特にあなたと親密な関係にある人(重要な人)との関係でストレスを感じることが多いのです。重要な人との関係性においては、互いを傷つけ合うこともあれば、互いの支えにもなるのです。

人は重要な人との関係で傷つき、重要な人との関係で癒されます。

人とうまく付き合う
あなたは今、大きく「役割」が変化している時期です。

「お母さん」としてのあなた
「妻」としてのあなた
「子」としてのあなた
「労働者」としてのあなた
「ママ友」としてのあなた

あげればきりがないくらい、人は多くの役割を持っています。
パートナーであるお父さん、あなたにとって重要な人(例えば、あなたの親、友人)も、もちろんあなたと同じように「役割」が変化しています。

役割が変化するとき、多くの人はストレスを感じ、重要な人との間に亀裂が入ることもあります。同じ出来事でも、重要な人の支えがあるかどうかで、その出来事の影響力は変わります。

人とうまく付き合う

重要な人との関係性で、よく問題になることが、次の3つです。

境界線

力とコントロール

役割(特にパートナーがいる場合)

人とうまく付き合う

あなたが考える「良き」母親とは?
あなたが考える「良き」パートナーとは? 冊子へ

あなたの期待通りにパートナーを変えることはまずできないでしょう。なぜなら、あなたとパートナーが育ってきた環境、性格は全く別物だからです!
他にも、文化的な違いもあるでしょう。
家庭のことは女性がやるべきという考えが強い地域もあります。

パートナーの反応があなたの期待と違うこともあるでしょう。そんなときは、あまり期待しないことで、少し気持ちが楽になるかもしれません。

人とうまく付き合う

「別の人」である重要な人と上手に付き合っていくためにはどうすればいいのでしょうか?まずは次のやり取りを聞いてみましょう!

体調が悪くソファに横になっていたあなたに、、、

この服、洗っといて 
この状態見てわからないの?そんなこと今頼まないでよ! え、、あ、うん。
やっておくね。
はぁ(ため息)、
やっておく。
今日は体調が悪くて、悪いんだけど明日でもいいかな?
この服、洗っといて 
この状態見てわからないの?そんなこと今頼まないでよ!
え、、あ、うん。
やっておくね。
はぁ(ため息)、
やっておく。
今日は体調が悪くて、悪いんだけど明日でもいいかな?
人とうまく付き合う

人との付き合い方には大きく分けて4つあります。
あなたはどの付き合い方をよくしていますか?

攻撃的 受身的 間接的 主張的(アサーティブ)
× ×
相手 × ×
少し体調が優れない日に、帰宅した夫から「この服、洗っておいて」と言われた。 「この状態見てわからないの?!体調悪いのにそんなこと頼まないで!」 「あ・・・うん、わかった。やっておくね。」 「はぁ(ため息)、やっておく」と不機嫌そうな顔をしながら洗濯をする。 「今日は体調が悪くて、今日中にはできないかも。明日でも大丈夫かな?」
少し体調が優れない日に、帰宅した夫から「この服、洗っておいて」と言われた。
攻撃的
私 ○ 相手 ×
「この状態見てわからないの?!体調悪いのにそんなこと頼まないで!」
受身的
私 × 相手 ○
「あ・・・うん、わかった。やっておくね。」
間接的
私 × 相手 ×
「はぁ(ため息)、やっておく」と不機嫌そうな顔をしながら洗濯をする。
主張的(アサーティブ)
私 ○ 相手 ○
「今日は体調が悪くて、今日中にはできないかも。明日でも大丈夫かな?」
人とうまく付き合う

重要な人とうまく付き合っていくために、「アサーティブスキル」 というスキルが役に立ちます。

アサーティブ(主張的)とは自分の主張だけを通すだけではなく、同時に相手も尊重するコミュニケーションの取り方です。

アサーティブスキルを身につけることができれば、重要な他者との関係を円滑にし、妊娠中、出産後の生活もしやすくなるでしょう!

人とうまく付き合う

次のやりとりを聞いて、どちらの方が上手な付き合い方か考えてみましょう。また、あなたなら他にどのような言い方ができそうでしょうか?

相手 状況 例1 例2
夕食を準備していたら赤ちゃんが泣き始めた。でも旦那はゲームをして気づいていない。
実の母 母乳(ミルク)をさっき十分あげたばかりなのに、赤ちゃんが泣いているからと実母がまたミルクをあげようとしている。
同居する義理の母 体調不良で夕飯が作れず、義理の母に頼みたい。
子どもを預けられるママ友 美容室に行くために、友人に子どもを預けたい。
会社の上司 所属する部署に急ぎの仕事が入ってきて、部署全体で対応が必要な時だが、体調不良のため早退したい。
夕食を準備していたら赤ちゃんが泣き始めた。でも旦那はゲームをして気づいていない。
例1
例2
実の母 母乳(ミルク)をさっき十分あげたばかりなのに、赤ちゃんが泣いているからと実母がまたミルクをあげようとしている。
例1
例2
同居する義理の母 体調不良で夕飯が作れず、義理の母に頼みたい。
例1
例2
子どもを預けられるママ友 美容室に行くために、友人に子どもを預けたい。
例1
例2
会社の上司 所属する部署に急ぎの仕事が入ってきて、部署全体で対応が必要な時だが、体調不良のため早退したい。
例1
例2
人とうまく付き合う

例2では、重要な人とうまく付き合うためのコツのいずれかを使っていました。これらのコツを覚えておくと良いでしょう!

  1. 「私(I)メッセージ」を使う。
    自分と相手の考えや見方は違うことを忘れないようにしましょう。
    あなた(You)メッセージ 私(I)メッセージ
    すぐにそのドアを閉めて(命令) (私は)そのドアをすぐに閉めてほしいな
    これじゃ汚れを落とせてないじゃない!(批判) (私は)これだと汚れが落ちてないと思うな
    人の言うことを全然聞いてないじゃない!(説教) 私の言うことを聞いてもらえると助かるな
  2. 相手の話(主張)をさえぎらずに、話を聴いて、相手の立場を尊重する。
    相手の話を相槌を打ちながら聴いたり(「そうだね」「そう思うのね」「うんうん」)、相手の話をまとめたりしてみましょう(「つまり、〜〜ということ?」)。
  3. あなたが相手に何をしてほしいのか、何をやってほしくないのか、「具体的に」「明確に」伝える。
  4. 相手が変わることを求めるよりも先に、まずはあなたができることをやってみる。
人とうまく付き合う

重要な人と話し合って問題を解決する必要があるときもあるでしょう。
そんなときのコツを覚えておきましょう!

  1. 一度に1つの問題だけに取り組む。
  2. リラックスしている時間を選ぶ。
  3. 冷静に話す。
  4. もし喧嘩になったら、「落ち着く時間」を取るように相手と決めておく。しかし話し合いを最後までするために、また落ち着いたら話し合いに戻ることも決めておく。
  5. 過去のことを持ち出したり、皮肉や批判を言わない(「あなたはいつも〜」「前もそうだったじゃない!」)。
人とうまく付き合う

人とうまく付き合う方法を学ぶことも大切ですが、重要な人と日頃から親密な関係性を育んでいくことも大切です。
産後、生まれた赤ちゃんと新しい関係性をつくっていく一方で、パートナーとの親密さが薄れたと話すお母さんも多くいます。
特に、スキンシップを含めた性的な親密さです。

パートナーとの親密さを保つことは、赤ちゃんにとってはもちろん、あなたとあなたのパートナーにとっても、いい影響がたくさんあります。

そのためにも、妊娠期だけではなく、産後にもパートナーとの会話やスキンシップを通して、お互いの気持ちを伝え合ったり、問題を解決していくことが重要です。

人とうまく付き合う

パートナーとの間でストレスを感じているとき、思いやりのある行動がとれずに、親密さはなかなか育ちません。できればパートナーと共有して、次のような思いやりのあるちょっとした行動を生活の中で増やしていきましょう!
例えば・・・

  • お茶をいれてあげる。
  • パートナーが好きなものを食卓に用意する。
  • パートナーが好きなものを仕事帰りに買って帰る。
  • 赤ちゃんが寝ているときに2人だけの時間をとる。
  • 「いつもありがとう」と日頃の感謝を伝える。
  • 疲れていそうなときに「頑張ってるね」と声をかける。
考えたらきりがありません!あなたができそうなちょっとした思いやりを見つけてみてください。
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まとめ

あなたの中の感情が伝えてくれるメッセージを知ることと、感情に振り回されることは全く違います!

「行動」を変えたり、「考え」を変えたり、問題自体を解決したりすることで、「感情」と上手に付き合うことができます。

もしやるべきこと、やりたいことができていないことが続いたら、それは感情に振り回されているかも・・・

あなたの行動と考えを振り返って、感情と上手に付き合っていきましょう!